2012年 03月 23日
催眠療法には援助的人間関係のスキルがない
心理療法には援助的人間関係のスキルが必須である。
より本格的な心理療法となれば、クライアントとカウンセラーの関係は密接なものにならざるをえない。そこでは、治療的にほどよい(協力)関係がずっと続くだけではすまなくなる場合が多々ある。クライアントとカウンセラーの協力関係がスムーズでなくなった時、それに対処できるようになるための専門的なスキルを身につけねばならないのである。(神田橋條治先生は逆に、相性が良い症例では常にズレを発掘するように務めるのが良いなどというが、それくらいに複雑かつ重要なものなのである)
そもそもクライアントの問題の背景には人間関係の問題が必ずあるのだからそれに精通していなければならないのは心理療法家として当然のことである。
ところが催眠療法は、心理療法のひとつとして「療法」と名付けられているにもかかわらず援助的人間関係の詳しいスキルはない。「ラポール」という催眠療法の始祖といわれる精神科医メスメルが使い始めた古くからある言葉が今でも用いられている位で、無いに等しいレベルなのである。これでは近代人の心性の多くに合致し得ない。
メスメルは、18世紀の後半にフランスで、動物磁気説を唱えて催眠療法をはじめ、集団療法では怪しげな装置まで用いたが、それらに感応したクライエントとの間に生じた関係を表現したのが、ラポールという言葉なのである。催眠療法以外の心理療法でも、クライアントと治療者の信頼関係を、ラポールという言葉で表している場合もあるが、メスメルが使った意味はどうみても近代的な相互の信頼関係ではない。メスメルの唱える説を素直に信じた人との一方通行の関係なのである。プラシーボ効果の出る人のように、ただただ素直に信じてくれる関係をラポールと言ったわけである。
メスメルからおよそ100年後の19世紀後半になって、心理臨床学の創始者であるフロイトの先輩精神科医ともいえるヨゼフ・ブロイエル(ブロイヤー)が催眠療法を用いて治療したクライアント、アンナ・Oの症例はあまりにも有名である。けれどもブロイエルの時代にも、援助的人間関係のスキルは稚拙であった。そのためブロイエルの子供を想像妊娠までしてしまったアンナ・Oをブロイエルは受け止めかねて、治療を中断してしまったのである。
その後に、催眠療法を手放したフロイトがようやく、転移逆転移という概念で(援助的)人間関係の重要性を取り上げたのである。フロイトはクライアントが治療者に向けてくる転移を分析する事自体が神経症が治癒に至る道であると言ったのである。フロイトの治療者がクライアントを分析的して解釈を与えるという上から目線の手法は現代にマッチしなくなっているが、その転移逆転移という概念は今では心理臨床界では当たり前に使われるくらいに浸透している。
けれども現在でも一般にある催眠療法界ではそれが未だにメスメルレベルと、ひどく立ち遅れているのである。催眠療法で援助的人間関係のスキルがなおざなりにされてきたのは「催眠療法を受けたらすごく良くなった」という、ただただ素直に信じて良くなる治癒例があるからである。危ないことに、そのような少数の典型例をバックに催眠療法を公言している催眠療法士もいる。
そして未だに、ブロイエルのようにクライアントを抱えきれなくなって見放ししまい、クライアントが深く傷ついてしまう事例が見受けられる。これはなにも催眠療法だけに限らず他の心理療法でも起こっている。しかし今まで鑑みてきたように援助的人間関係のスキルが確立していない催眠療法では特にその危険性が一段と高いのである。
催眠療法を学ぶ際にはそれと並行して援助的人間関係のスキルも必ず会得していかねばならない。それが現代の心理臨床界で、立ち遅れた位置にある催眠療法が今後に発展していける道である。またなによりも、催眠療法に期待して来談するクライアントにほんとうに役立つためにそれが必須なのである。
参考文献:伊藤良子『心理療法論』 神田橋條治『精神療法面接のコツ』

応援していただけるようでしたらワンクリックお願いします。
より本格的な心理療法となれば、クライアントとカウンセラーの関係は密接なものにならざるをえない。そこでは、治療的にほどよい(協力)関係がずっと続くだけではすまなくなる場合が多々ある。クライアントとカウンセラーの協力関係がスムーズでなくなった時、それに対処できるようになるための専門的なスキルを身につけねばならないのである。(神田橋條治先生は逆に、相性が良い症例では常にズレを発掘するように務めるのが良いなどというが、それくらいに複雑かつ重要なものなのである)
そもそもクライアントの問題の背景には人間関係の問題が必ずあるのだからそれに精通していなければならないのは心理療法家として当然のことである。
ところが催眠療法は、心理療法のひとつとして「療法」と名付けられているにもかかわらず援助的人間関係の詳しいスキルはない。「ラポール」という催眠療法の始祖といわれる精神科医メスメルが使い始めた古くからある言葉が今でも用いられている位で、無いに等しいレベルなのである。これでは近代人の心性の多くに合致し得ない。
メスメルは、18世紀の後半にフランスで、動物磁気説を唱えて催眠療法をはじめ、集団療法では怪しげな装置まで用いたが、それらに感応したクライエントとの間に生じた関係を表現したのが、ラポールという言葉なのである。催眠療法以外の心理療法でも、クライアントと治療者の信頼関係を、ラポールという言葉で表している場合もあるが、メスメルが使った意味はどうみても近代的な相互の信頼関係ではない。メスメルの唱える説を素直に信じた人との一方通行の関係なのである。プラシーボ効果の出る人のように、ただただ素直に信じてくれる関係をラポールと言ったわけである。
メスメルからおよそ100年後の19世紀後半になって、心理臨床学の創始者であるフロイトの先輩精神科医ともいえるヨゼフ・ブロイエル(ブロイヤー)が催眠療法を用いて治療したクライアント、アンナ・Oの症例はあまりにも有名である。けれどもブロイエルの時代にも、援助的人間関係のスキルは稚拙であった。そのためブロイエルの子供を想像妊娠までしてしまったアンナ・Oをブロイエルは受け止めかねて、治療を中断してしまったのである。
その後に、催眠療法を手放したフロイトがようやく、転移逆転移という概念で(援助的)人間関係の重要性を取り上げたのである。フロイトはクライアントが治療者に向けてくる転移を分析する事自体が神経症が治癒に至る道であると言ったのである。フロイトの治療者がクライアントを分析的して解釈を与えるという上から目線の手法は現代にマッチしなくなっているが、その転移逆転移という概念は今では心理臨床界では当たり前に使われるくらいに浸透している。
けれども現在でも一般にある催眠療法界ではそれが未だにメスメルレベルと、ひどく立ち遅れているのである。催眠療法で援助的人間関係のスキルがなおざなりにされてきたのは「催眠療法を受けたらすごく良くなった」という、ただただ素直に信じて良くなる治癒例があるからである。危ないことに、そのような少数の典型例をバックに催眠療法を公言している催眠療法士もいる。
そして未だに、ブロイエルのようにクライアントを抱えきれなくなって見放ししまい、クライアントが深く傷ついてしまう事例が見受けられる。これはなにも催眠療法だけに限らず他の心理療法でも起こっている。しかし今まで鑑みてきたように援助的人間関係のスキルが確立していない催眠療法では特にその危険性が一段と高いのである。
催眠療法を学ぶ際にはそれと並行して援助的人間関係のスキルも必ず会得していかねばならない。それが現代の心理臨床界で、立ち遅れた位置にある催眠療法が今後に発展していける道である。またなによりも、催眠療法に期待して来談するクライアントにほんとうに役立つためにそれが必須なのである。
参考文献:伊藤良子『心理療法論』 神田橋條治『精神療法面接のコツ』

応援していただけるようでしたらワンクリックお願いします。
# by osaonoda | 2012-03-23 21:45 | 催眠療法について | Trackback | Comments(0)











